写真プロジェクトを長期間にわたって続けるには?:ONWARD インタビュー

Greg Miller Greg Miller

写真家としてのキャリアを築く上で、長期のプロジェクトを開始し、完成させるのは非常に困難なことです。 すばらしいアイデアを持ってスタートし、それを成し遂げようともがき、スランプを経験するなかで、それでも創作への意欲を保ち続けることには、誰もが苦しんできました。フォトグラファーとして、作品の核とも言えるその意欲を持ち続けるにはどのような考え方が必要なのでしょうか?

今回は、現役フォトグラファーであり、後進への指導を行い学生と同じように創作活動の葛藤を経験されてきた、Dimitra Ermeidou(ディミトラ・エアマイドゥ)Karen Marshall(カレン・マーシャル)Greg Miller(グレッグ・ミラー)の各氏 にインタビューを行い、それぞれの経験に基づく貴重なアドバイスをいただきました。


皆さんはそれぞれ、プロとして教育するということに豊富な経歴をお持ちです。学生が長期のゴールの達成に向けて臨むとき、最も困難なことは何だと思いますか?

Karen Marshall(カレン・マーシャル、以下 Karen):自分の作品としっかりとした結びつきを持つのは、時に非常に難しいことです。特に、すばらしいアイデアが浮かんでも、それをどう表現してよいのか分からないような時には。

目的を持って撮影を始めても、撮った写真が当初の考えとぴったりと沿わず、編集で苦心することがあります。私はそのような場合、生徒が自分のイメージと対話する方法を見つけるということに焦点をあててサポートし、各自のイメージの中でこれまでのプロセスとこれから進むべき方向を見つけるようにするのです。

Dimitra Ermeidou(ディミトラ・エアマイドゥ、以下 Dimitra):特に、分かりやすい結果や写真の全体像がまだ見えていない時、集中とやる気を維持することは困難です。根気と忍耐力の不足は、失敗を恐れためらうことと同様に、よい仕事を作り出す妨げになります。

徹底的に助言し、進行中の創作へのチャレンジを頻繁にチェックすることは、そのような困難を乗り越えるのに非常に役に立ちます。私は、質問を投げかけ、アイデアを提供し、様々な手法を提示することで学生のニーズや願望に近づけ、独自の強みを発見し、強化し、恐れずに試し、創作の問題を解決できるように手助けします。

Dimitra Ermeidou Dimitra Ermeidou

Greg Miller(グレッグ・ミラー、以下 Greg):長期的なプロジェクトは、1ヶ月で完成する時もあれば20年かかることもあります。一番難しいのは、自分がその仕事に固着してやり続けるということを信じることです。自分のアイデアを視覚的に表せるのは自分だけであり、自分がそれに取り掛からなければ存在することはない。とても孤独なことです。自分を目覚めさせてプロジェクトに取り掛かるのを促す人など他に誰もいませんから。私はその役割を担っているのです。

長期的なプロジェクトに取り掛かるときの、創作過程を教えていただけますか?

Dimitra:私の創作過程はプロジェクトにもよりますが、たいていは、基本的に表現したいと心から離れないアイデアのあるコンセプトから取り掛かります。それを自分が適切だと思う撮影技法でテストを重ね、洗練させていくのです。または、イメージを膨らませてくれる手がかりとなるような映像をまず撮影し、プロジェクト全体を作りあげることもあります。編集と選択の段階では、自分の写真を何度も繰り返し見ることに時間を費やし、できる限り客観的になるよう努めます。そのプロジェクトで何を成し遂げたいのか、どこでどのように公開されるべきかなどを考えます。最高の作品を選ぶには多くの原則があり、私のアートキュレーターとしての経験が大変役に立っています。

Greg: 私は新しいプロジェクトでは、考えに考えればそこに何かが必ずある、と思っています。まずは何枚かの写真を撮り、そこからより大きなプロジェクトを思い描き、前に進みます。作品をプリントして、オフィスに貼り、常に全体を見るようにしています。プリントすることで、写真プロジェクトを物理的に常に存在させておく、それが私にはとても重要なことだと思います。

Greg Miller

長期的なプロジェクトをスタートしようとしている人へのアドバイスは?

Karen: 本当に目に浮かぶ、そして長い間本当に興味を持って探求できるプロジェクトを見つけることです。しっかりとした目的をもって惜しまず仕事をしなければいけませんが、やろうとしていることをどのように編集して概念化するのかを理解できるまでは、しばしばそれは未知の世界です。考えていることと実際に捉えたこと、どの写真にインパクトがあってそれをどのように繋ぎ合わせるかというのは、ギブアンドテイクです。多くの技術を要しますが、何よりも決意と持久力がアイデアを深く掘り下げ定着させるのです。

Karen Marshall Karen Marshall

Karenさん、あなたは個展だけでなく、商業的な多数の出版物の写真、公共や個人のイベントの記録写真の経験がありますね。作家としての創作活動と広告、編集、イベント等の撮影はどのようにバランスをとっていますか?

Karen: 私はフォトグラファーとしての経験が長いのですが、ある時期、自分の撮影のための時間が持てない期間がありました。その時、自発的な作品であっても顧客のためのものであっても、私の創造力と独自の観点をどの撮影の経験にも取り入れることがとても重要だと気づいたのです。顧客のための仕事は人と出会う機会を与えてくれ、私の力だけでは得られなかったであろう状況を与えてくれることがあります。これらの状況や経験が私の視野を広め、個人的な作品にも影響を与えてきたのです。

Dimitra ErmeidouDimitra Ermeidou

Dimitraさん、あなたの作品は象徴的で、多くの再利用・再構築を使った作品がありますね。あなたの独特の視点と展望は、学生にとってどのように有益だと思いますか?

Dimitra: 私の作品はプロジェクトに基づいています。ですので、それぞれのプロジェクトのコンセプトとゴールによっては様々な写真の手法を使うこともあります。より象徴的なレベルでプロジェクトに焦点をあてる、好奇心と実験的な感覚が原動力です。このことが私の展望を豊かにし、とても自由でいられるのです。

私は写真を教える時も同じような手法を使います。すばらしいイメージを作り出しているすべてのやり方を高く評価し、学生や同僚には写真のジャンルにとらわれずに評論をしてきました。どんな作品に対しても洞察的なフィードバックを提供することは、優れた美術教育者の重要な要件だと思います。フォトグラファーの目的がどのようにイメージに反映されるか、何がそれらを輝かせるかを常に考えています。私は全体像をとらえることが得意で、発想が豊かで、作品への評価に大変関心があるということで評価をいただいています。

Gregさん、あなたは日常生活と人間の一瞬を捉えることを専門に写真を撮りますね。教育課程ではそれをどのように取り入れていますか?

Greg: 人物写真は難しいですね。被写体に話しかけるのか、話しかけないのか。被写体がカメラを見るのか、見ないのか。人物と向き合うとき、そのような数え切れないほどの疑問が頭の中に浮かびます。私は学生に、それらをすべてを静め、自分の心が何を伝えようとしているのかに耳を澄ますように促します。そうすることで、初めての被写体と向き合った時にも心の透明さを保てるように手助けとなるのです。


ONWARD アメリカ版では、7月より長期的な写真プロジェクトの成功を目標とした10ヶ月のオンライン講座「ONWARD Global Mentorship Program」を開始しました。この講座では、今回のインタビューに参加していただいた Karen、Greg、Dimitra が講師として、またレビュアーとして各生徒のプロジェクトの進行を指導し、長期の写真プロジェクトの進め方について学ぶことが可能です(※英語版のみ)。

当コースへの申込受付はすでに終了しましたが、今後のONWARD アメリカ版のオンライン講座に興味のある方は下記のリンクからチェックしてみてください。

ONWARD Global Mentorship Program について詳しく見る »

Karen Marshall
ニューヨークを拠点として活躍しているフォトグラファー兼教育者。Transart Instituteにて芸術修士(MFA)取得。世界中で個展と作品の出版が行われ、現在はMaine Media WorkshopのPRE-芸術修士課程で指導している。国際写真センター(ICP)でフォトジャーナリズムセミナーを指揮し、ニューヨーク大学(NYU)の兼任写真教授でもある。

Greg Miller
スクール・オブ・ビジュアル・アーツで美術学士を取得するためにニューヨークに移住。現在、コネチカット州在住。彼の作品は複数の国の主要出版物で特集され、世界中で公開されている。国際写真センター(ICP)、Maine Media Workshopsでの指導も継続して行っている。

Dimitra Ermeidou
テンプル大学で写真科の芸術修士(MFA)を取得。現在、同校助教授。教員の仕事の傍ら、現役カメラマンとしてアメリカ内外の展覧会や写真フェスティバルに参加している。

この記事はONWARDアメリカ版ブログに掲載された記事の翻訳版です。

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